令和元年度司法試験 国際私法 再現答案&ふりかえり&勉強方法

 令和元年度司法試験の国際私法の再現答案です。再現答案は国際私法しか作成していません。司法試験終了後一週間以内に作成したものですが、再現度は70%程度だと思います(答案構成は残っているので内容の再現度は高いですが、あてはめの密度や表現が本番より劣っていると思います)。

 

【再現答案】67.16点(16~18位)

 

第1問

第1、設問1について

1、AとBがそれぞれDと養子縁組を日本において有効にすることができるかは、「養子縁組」の問題として、法の適用に関する通則法(以下、「法」とする。)31条1項によることになる。

(1)法31条1項の趣旨は、養子縁組がされた場合、養親子の生活は養親の本国を中心としたものになるのが一般的であるため、養親の本国を連結点とすることにある。

 本件についてみると、Dの養親となるべき者であるAとBはそれぞれ本国が甲国であるため、AD間、BD間の養子縁組については、それぞれ甲国法が準拠法になる。

(2)甲国民法①は、養子縁組をするには、家事裁判所の決定によらなければならないと規定しており、決定式の養子縁組を採用している。この場合、日本において甲国法による養子縁組をするには、日本法のいかなる手続によるべきか、いわゆる手続代行が問題となる。

 この点、手続代行の可否は、当該手続が要求される趣旨を全うできる日本の制度があるか否かにより判断すべきと解する。

そして、決定型の養子縁組において裁判所の関与が要求されているのは、養子保護の観点から養親としての適切性等を実質的に判断するためである。かかる趣旨を考慮すれば、子の利益に適うかを実質的に判断することができる日本の特別養子縁組の成立審判手続(民法817条の2以下)で代行すべきと解する。これは、甲国民法②の趣旨にも適う。

 よって、AD間、BD間の養子縁組の方式は、日本の特別養子縁組の成立審判手続によるべきであり、それに従えば有効に行うことができる。

(3)次に、法31条1項後段は、養子となるべき者を抵触法上保護するため、いわゆるセーフガード条項を規定している。

 本件についてみると、養子となるべき者であるDの本国法である日本法も累積適用されることになる。

 本件で、Dは5歳であるため、民法797条1項により、Dの法定代理人であるCの承諾が要求されるが、Cは養子縁組に承諾しているため、これは満たされる。また、Dは未成年者であるため(法4条1項、民法4条)、民法798条により、家庭裁判所の許可が必要となるが、これは上述した特別養子縁組の成立審判手続に含まれるといえるため、この点も満たされる。さらに、Dは未成年者であるため、民法795条により、AとBが共同して養子縁組することが要求されるが、特別養子縁組の手続により養子縁組がなされる以上、これも満たされる。

(4)また、養子縁組の方式は、法34条が適用される。法34条は、法律行為の成立の問題と密接な関係があるため成立の準拠法と同一のものによるべきだが、これを厳格に貫くと当事者の期待に反し得るため、「場所は行為を支配する」との原則から行為地法に適合する方式も有効とする選択的連結を採用する。

 本件における養子縁組は、少なくとも日本法の方式に適合すると考えられるため、法34条2項により、方式としても有効である。

(5)以上より、AとBは、Dとの養子縁組を日本において有効に行うことができる。

第2、設問2について

1、AとBが、CとDとの親子関係を維持したままそれぞれDと養子縁組をすることができるかは、「養子縁組」の問題として法31条1項によることになる。

(1)BD間については、Bの本国法は甲国法であるため、甲国法によることになるとも思える。

 もっとも、「その国の法に従えば日本法によるべきとき」として反致(法41条)が成立し、日本法によるべきことにならないか。

 甲国国際私法③は、裁判所は、養親となるべき者の住所が国内にある場合は甲国の裁判所が国際裁判管轄を有するとする管轄権的アプローチをとっている。そして、甲国国際私法④は、養子縁組の決定は法廷地法によるとしていることから、③と④があいまって、甲国国際私法は、養親となるべき者の住所が甲国にある場合には甲国法に従って養子縁組をするべきとする態度をとっていることが分かる。そうだとすると、甲国国際私法は、養親となるべき者の住所が甲国にない場合には、甲国裁判所において養子縁組をしないという態度をとっているといえ、かかる場合には、甲国国際私法④により、法廷地法により養子縁組の決定がなされるべきとしているといえる。

 本件についてみると、養親となるべき者であるBの住所は日本にあり、かつ、法廷地は日本であるため、甲国国際私法によると、養子縁組は日本法によりよるべきといえる。

 よって、「その国の法によれば日本法によるべきとき」といえ、反致が成立し、準拠法は日本法となる。

(2)また、AD間については、Aの本国法が日本法であるため、日本法によることになる。

(3)よって、本件ではAD間、BD間ともに準拠法は日本法となる。

 本件では、Dの養子縁組に当たり、CとDの親子関係を維持したいため、普通養子縁組を行うことになる。

 上述同様Dは未成年者であるため、民法795条により夫婦共同養子縁組が要求され、また、798条により家庭裁判所の許可が必要となる。また、Dは15歳未満であるため、797条によりDの法定代理人Cの承諾も必要となるが、上述同様これは満たされる。

(4)また、養子縁組の方式は、法34条によるが、本件では少なくとも日本法の方式にしたがって行われるといえるため、法34条1項により、方式としても有効である。

(5)以上より、AとBは、CとDとの親子関係を維持したままそれぞれDと養子縁組をすることができる。

第3、設問3について

1、小問1について

AとBがそれぞれDと養子縁組をすることができるかは、「養子縁組」の問題として法31条1項によることになる。

(1)AD間、BD間ともに、養親となるべき者たるAとBの本国法はともに日本法であるため、日本法が適用されることになる。

 また、法31条1項後段のセーフガード条項の適用があり、養子となるべき者たるDの本国法である乙国法が累積適用される。

(2)以上より、本件養子縁組には、日本法と乙国法が適用されることになる。

2、小問2について

(1)まず、法31条1項前段により日本法が適用される。Dは未成年者であるため、民法795条により夫婦共同養子縁組が要求され、また、798条により家庭裁判所の許可が必要となる。また、Dは15歳未満であるため、797条によりDの法定代理人Cの承諾も必要となるがこれは上述同様満たされている。

(2)次に、法31条1項後段により、乙国法が累積適用される。

 本件では、養子となるべき者たるDは5歳であり満10歳未満であるため、乙国民法⑧によりDの実親のCの承諾が必要となるが、Cは養子縁組を承諾しているため、これは満たされる。

 また、養親となるべき者たるAとBの間に15歳の実子Eがいるため、乙国民法⑨により、Eの同意が必要になる。この点につき、法31条1項後段の「第三者」の範囲が問題となるも、法31条1項後段は条文上第三者の範囲を特に限定しておらず、また、そもそも何が子の保護に資するかの峻別は困難であるから、「第三者」は広く解すべきであるといえるため、このような者も「第三者」に含まると解するべきである。そのため、やはりEの同意が必要であると考えられる。

 そうすると、本件でEはA、BとDとの養子縁組に反対しているため、乙国民法⑨を満たさず、養子縁組は成立しないことになる。これは、日本法の適用結果と異なるとして、公序(法42条)が発動しないか。

 通則法42条の趣旨は、妥当でない準拠国際法の適用結果を回避し、内国の公序良俗を守る点にある。そして、たとえ外国法の適用結果が異常でも、内国との関連性が薄ければ、内国の公序を害せず、公序の適用の必要はない。

 そこで、公序に反するか否かは、①外国法の適用結果の異常性と、②事案の内国関連性の相関関係により判断すべきと解する。

 本件についてみると、15歳であり完全な判断能力が備わっているとも言い難いEのみの反対で養子縁組の成立が否定されるのは、結果としての異常性が高いといえる(①)。また、AとBは日本国籍を有しており、A、B、Dは日本に住所を有しており、今後の生活も日本においてなされると考えられるから、内国関連性も高いといえる(②)。

 よって、公序が発動し、乙国民法⑨の適用結果は排除される。

 そして、公序発動後の処理であるが、公序が発動された場合には、準拠法指定をやり直すべきとの補充的連結説や、法規範の欠缺を否認する欠缺否認説がある。しかし、前者については、段階的連結以外の場合には準拠法指定のやり直しができないし、欠缺否認説についても、量的判断など二者択一的判断以外の場合には解決が困難であり、仮に解決のための基準を定立し得るとしても裁判所に過度の負担を負わせることになり妥当ではない。

 そもそも、公序則が発動された場合、指定された準拠法の適用が排除され、法規範の欠缺が生じていると考えられるところ、内国法秩序の維持を貫徹するという42条の趣旨や基準の明確性の見地からすれば、国内法すなわち日本法をもって補充すべきと解する。

 本件についてみると、日本民法については、養親となるべき者の実子の同意は要求されていないため、Eが反対していても、養子縁組の成否に影響はない。

 よって、A、BとDとの間の養子縁組は有効に成立する。

(3)また、養子縁組の方式は、法34条によるが、本件では少なくとも日本法の方式にしたがって行われるといえるため、法34条1項により、方式としても有効である。

(4)よって、AとBは本件養子縁組を日本において有効に行うことができる。

                                     以上

 

第2問

第1、設問1について

1、請求①について

 請求①は、本件詩中のXに窃盗癖があるとの記述がXの名誉を毀損することを理由とした不法行為に基づく損害賠償請求としての慰謝料の請求である。これは、「他人の名誉」「を毀損する不法行為によって生ずる債権の成立」の問題として、法19条によることになる。

(1)法19条の趣旨は、名誉侵害については、通常の不法行為と異なり、結果発生地が明確でないことから、通常最も重大な損害が生じていると考えられる被害者の常居所地が最も関係性を有するといえるし、また、被害者の常居所地を連結点とすることで被害者保護に資する上、加害者の予測測可能性も通常害されないという点にある。

 本件では、Xの常居所は甲国であるため、準拠法は甲国法となる。

(2)もっとも、法20条は具体的妥当性を図るため、不法行為において、より密接な関係がある他の地がある場合には、その地の法を準拠法とすると規定している。

これを本件について検討するに、本件詩の著者であるYの常居所は日本であるため、不法行為の当時において当事者が法を同じくする地に常居所を有していたとはいえないし、XとYとは不法行為当時契約関係にもなかった。他の事情に照らしても、日本より本件不法行為に密接な関連を有する地はないといえる。

 よって、法20条の適用はない。

(3)以上より、請求①の準拠法は甲国法である。

2、請求②について

 請求②は、本件詩中のXが精神疾患を患っていたとの記述がXのプライバシー権を侵害することを理由とした不法行為に基づく損害賠償請求としての慰謝料の請求である。かかかる問題をいかに法性決定すべきか問題となるも、法性決定は連結政策等を考慮して、国際私法自体の立場から決すべきであると考える。

(1)この点、法19条は、「他人の名誉・・・不法行為」は上述したように、物理的な権利侵害が存在せず、その結果が被害者の常居所においてもっとも重大に発生していると考えることができることを理由として、被害者の常居所地法を準拠法としている。

 そして、プライバシー権侵害は、物理的な権利侵害は観念されず、侵害結果は、被害者の常居所地においてもっとも重大に発生するといえる点で、名誉又は信用の毀損と類似しているといえる。

 よって、プライバシー権侵害を理由とする不法行為も、「他人の名誉・・・不法行為」として、法19条によるべきである。

 本件で、Xの常居所は甲国であるため、準拠法は甲国法となる。

(2)また、法20条の適用が問題となるも、上述と同様に、その適用はない。

(3)よって、請求②の準拠法は甲国法である。

3、請求③について

(1)前提として、ベルヌ条約5条(2)は著作権の保護について「専ら、保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる」としており、(3)は「著作物の本国における保護は、その国の法令の定めるところによる」としていることから、ベルヌ条約は、著作権属地主義を定めているといえる。つまり、著作権侵害の結果は、登録国ごとに生じるといえる。

(2)日本における著作権の侵害を理由とする損害賠償請求について

ア、日本における著作権の侵害と理由とする損害賠償請求は、カードリーダー事件判決と同様に、「不法行為」と法性決定し、法17条によるべきである。

 法17条の趣旨は、結果発生地は不法行為に基づく法律関係に関して最も利害関係を有する地であるといえるし、被害者と加害者双方にとって予測可能で、かつ双方にとって中立である上、抵触法上の被害者保護にも資する点にある。

 そして、著作権属地主義の原則により、侵害の結果はその登録国において生じているといえる。

 よって、法17条本文により、準拠法は日本法になる。

イ、そして、登録国である日本における結果発生はYにとっても予見可能であってといえるため法17条ただし書の適用はなく、また、上述同様、法20条の適用もない。

ウ、以上より、上記請求の準拠法は日本法である。

(3)甲国における著作権の侵害を理由とする損害賠償請求について

ア、甲国における著作権の侵害を理由とする損害賠償請求は、上述同様「不法行為」として法17条によるべきである。

 そして、結果発生地たる登録国は甲国であるため、準拠法は甲国法となる。

イ、また、上述同様、法17条ただし書、法20条の適用はない。

ウ、以上より、上記請求の準拠法は甲国法である。

第2、設問2について

1、小問1について

 日本の裁判所においてXの執行判決請求が認められるかは、訴訟手続の問題として、「場所は行為を支配する」の原則から導かれる「手続は法廷地法による」の原則から、日本法により判断されることになる。

(1)本件外国判決は甲国民法P条を適用して慰謝料に加えてその3倍程度の懲罰的損害賠償請求を認容したものであるが、これは公序(民事執行法24条3項、民事訴訟法118条3項)に反しないか。

 民事訴訟法118条3号の趣旨は、妥当でない準拠国際法の適用結果を回避し、内国の公序良俗を守る点にある。そして、たとえ外国法の適用結果が異常でも、内国との関連性が薄ければ、内国の公序を害せず、公序の適用の必要はない。

 そこで、公序に反するか否かは、①外国法の適用結果の異常性と、②事案の内国関連性の相関関係により判断すべきと解する。

 これを本件についてみると、日本における不法行為制度の趣旨は、損害の公平な分担にある。そして、懲罰的損害賠償制度は、主に加害者に対するみせしめを目的としており、日本における不法行為制度とはその趣旨を異にしている。また、甲国法上、懲罰的損害賠償によって得た金銭は国庫に納められるわけではなく、被害者が使途に制限なく使用できる点で、被害者が過大な利益を得るものともいえる。そのため、外国法の適用結果の異常性は高いといえる(①)。さらに、加害者Yは日本に常居所を有する日本人であるため、内国関連性も高いといえる(②)。

(2)以上より、公序が発動し、本件執行判決は、少なくとも懲罰的損害賠償の部分についての執行は承認されない。

2、小問2について

 上述同様、日本においてXの執行判決請求が認められるかは、日本法により判断される。

(1)本件外国判決は、民事執行法24条3項、民事訴訟法118条2号の要件を満たすか。

 民事訴訟法118条2号の趣旨は、手続の通知が適正に行われなかったことにより被告が外国訴訟手続に十分関与できなかった場合に、その結果として下される敗訴判決の承認を拒むことで被告の手続的保護を図る点にある。かかる趣旨からすれば、同号の「送達」があったというためには、被告が現実に訴訟手続開始の了知可能性があり、かつ、その防御可能性がなければならないと解する。

 これを本件についてみると、本件外国判決の訴状及び期日呼出状はXの弁護士からYに対して日本語の翻訳文を添付して送付されているため、Yはその内容を理解することができたといえ、了知可能性があったといえる。

 また、訴状及び期日呼出状はYが訴訟に対応できる時間的余裕をもって送付されていたたため、Yに応訴の準備を行うための時間が与えられていたといえ、防御可能性もあったといえる。

 よって、同条2号の要件を満たす。

(2)したがって、Xの執行判決請求は認められる。

                                     以上

 

【ふりかえり】

 

【勉強方法】

・国際財産法の範囲はロー2年次前期の授業で一応やっていたが、本格的な勉強は予備試験の合格発表後から始めた。

・アガルートの丸野先生の講座をメインで受講した。他には、リークエ、松岡入門、百選を使用した。

・丸野先生の講義を受ける→丸野先生の講義の論証を覚える→過去問を答案構成して

 丸野先生の過去問解析講座を受ける→リークエ・松岡で穴を埋める、という感じで勉強した。

最高裁判例が問われる可能性が高いと思ったので、百選掲載の最高裁判例は重点的に勉強した(奏功せず)。