H30年度予備試験論文式 行政法 再現答案

 行政法 評価:A 所要時間:75分

 

第1、設問1について
1、本件勧告について
(1)本件勧告が「処分」(行政事件訴訟法(以下、「行訴法」とする。)3条2項)に当たるか。
 「処分」(行訴法3条2項)とは、公権力の主体たる国又は公共団体の行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。具体的には公権力性と法的効果があるかをメインに判断する。
(2)まず、本件勧告は知事により一方的に行われるため、公権力性は認められる。
ア、法的効果について、Xとしては、本件勧告により条例25条に反しないように取引を行う地位が形成され、また、勧告がなされると、後述するように大きな不利益につながる公表(条例50条)が相当程度の蓋然性をもってなされるため、成熟性もあると主張する。
イ、これに対するY県側の反論としては、本件勧告は行政指導の性質を有する事実行為にすぎず、法的効果はないと主張することが考えられる。また、後続処分として公表が控えている以上、成熟性を欠き、法的効果が認められないと主張することが考えられる。
ウ、Xの主張する通り、本件勧告により条例25条に違反しないように取引を行わなければならない地位が形成され、個別具体的な効果を有しているといえる。また、勧告がなされ、それに従わないでいると不利益の大きい公表が相当程度の蓋然性をもってなされるといえるため、紛争の成熟性もあるといえる。よっって、本件勧告は法的効果を有しているといえる。
 また、条例49条が勧告の際に意見陳述の機会を必要的に保障していることは、条例作成者が勧告を不利益処分(行政手続法2条4号)と同様の性質のものと考えていることの表れであるといえる。このことからも、本件勧告に処分性が認められるといえる。
(3)以上より、本件勧告は「処分」に当たる。
2、本件公表について
(1)本件公表が「処分」に当たるか。前述の基準で判断する。
(2)本件公表は、知事により一方的に行われるため、公権力性は認められる。
ア、法的効果について、Xとしては、本件公表によりXが悪徳業者であるかのような印象を消費者に与えることになり、Xにとって不利な状態で営業しなければならないという地位が形成されるため、法的効果があると主張する。
イ、これに対し、Yの反論としては、公表は事実行為にすぎず、Xの主張する効果も事実上の効果にすぎず、法的効果を有しているとはいえないと主張することが考えられる。
ウ、Xの主張する通り、本件勧告によりXにマイナスイメージが付き、Xが不利な状態で営業することになるという効果は、Xの地位を具体的に変動させるものであるといえる。また、本件公表により、Xは金融機関からの融資をストップさせられるという個別具体的な法的効果が生じているといえる。
(3)以上より、本件公表は「処分」に当たる。
第2、設問2について
1、(1)前提として、本件ではXの従業員の一部の(ア)の言動は条例25条4号の「消費者を心理的に・・・方法」に当たり、(イ)の言動は「消費者に迷惑を覚えさせる方法」に当たることは明らかであるといえる。
そこで、Xは、本件は「消費者の利益が害されるおそれあると認められるとき」に当たらないのにもかかわらず本件勧告を行っているため、本件勧告はその要件を欠き違法であると主張する。
(2)これに対し、Yとしては、「消費者の利益が害されるおそれあると認められるとき」に当たるかの判断については裁量が認められ、今回は裁量の範囲内のものとして適法であると反論することが考えられる。
(3)Xとしては、裁量が認められるとしても、裁量の逸脱・濫用(行訴法30条)があり、違法であると主張する。
ア、では、本件においてYに裁量が認められるか。
 行政庁の裁量権の有無は、法令の規定、処分の性質、行政機関が行う判断の性質等を考慮して判断される。
 本件では、いかなる場合に消費者の利益が害されるおそれがあるといえるかについては知事の専門技術的な判断が必要といえ、また「おそれがあるとき」という抽象的な文言を用いている。
そうすると、48条は本件勧告を行うことにつき、知事に要件裁量を認めている。
イ、次に、本件において裁量の逸脱・濫用があるといえるか。
この点については、行政庁の判断の結果及び過程について、重要な事実の基礎を欠くか又は社会観念上著しく妥当性を欠く場合に、裁量権の逸脱・濫用があるとして違法となると解する。
本件では、Xは意見陳述手続の際に①~③のことを主張している。③により、今後は条例25条4号に該当するような方法で営業が行われるおそれは低下しているといえる。しかしながら、YはかかるXの主張を受け入れずに漫然と本件勧告を行ったといえる。これはYに考慮不尽があるといえ、裁量権の逸脱・濫用があり、違法である。
2、(1)次に、Xは本件が48条の要件を充足するとしても、48条は要件を充足していたとしても必要的に勧告を行わなければならないといったものではないため、本件では勧告を行う必要がないのに勧告を行ったとして違法であると主張する。
(2)これに対し、Yとしては、本件勧告を行うか否かについては裁量が認められ、今回は裁量の範囲内のものとして適法であると反論することが考えられる。
(3)勧告を行うべきか否かについては知事の専門技術的な判断が必要であること、また「できる」という文言から、勧告を行うか否かについては知事の効果裁量が認められると考える。
 本件では、上述のようにXは①~③のことを主張している。①により、条例25条4号に当たるような営業を行っているのは従業員の一部にすぎず、組織ぐるみでその不適切な営業を行っていたのではないといえる。しかし、YはかかるXの主張を受け入れずに漫然と本件勧告を行ったといえる。これはYに考慮不尽があるといえ、裁量権の逸脱・濫用があり、違法である。
3、また、Xとしては、本件勧告の際の理由呈示は「条例25条第4号に違反して不適切な取引行為を行ったこと」であり、これは被処分者たるXにおいていかなる事実にいかなる法規が適用されたかを了知できる程度にないため、理由呈示の程度として不十分であり、違法であると主張することが考えられる。
 しかしながら、本件勧告が不利益処分に類似するとしても、行政手続法は適用除外となっているため(行政手続法3条3項)、行政手続法14条違反を主張することはできない。
 そのため、Xの上記主張は認められない。                 以上

 

【コメント】

・設問1は、「Xとしてはどのような主張をすべきか」という問題文に対する応答としては若干ずれた書き方をしてしまっている。

・設問1は、とりあえず思いついたことを主張反論形式の中にぶちこんだだけなので、主張と反論が全くかみ合っていない。

・設問2は、要件裁量、効果裁量、理由呈示について書こうとしていたが、設問1に紙面を割きすぎてしまったため、どれも必要最低限の記載しかできなかった。

行政法を先に解いたが、75分も使ってしまったのは憲法の難易度如何で危険である。

 

以上です。