京都大学法科大学院平成30年度入試 民法 再現答案

A君 65点

第1問

第1、小問1

1、Cは土地甲を占有しているAに対して、所有権(206条)に基づく返還請求権として甲の引渡請求をすることができるか。かかる請求が認められるためにはCに所有権が認められることを要する。

2、かかる請求に対して、AはそもそもBが行った本件譲渡担保設定契約は利益相反(826条1項)にあたり、無権代理としてかかる契約の効果が自らに帰属しないため、甲の所有権は自らのもとにあり、上記反論は認められない旨反論する。

(1)この点、取引安全の観点から、利益相反にあたるか否かは行為の外形により判断するべきである。

(2)これを本件についてみると、本件譲渡担保設定契約の相手方は第三者であるCであるため、利益相反行為にはあたらない。

(3)したがって、本件契約は無権代理とならず、上記反論は認められない。

3、そうだとしても、Bの行為は権限濫用にあたり、自らに効果帰属しないと反論することはできないか。

(1)そもそも、親権者の代理行為は利益相反に当たらない限り、親権者の広範な裁量(824条)に委ねられている。

 そこで、親権者に法定代理権を与えた法の趣旨に著しく反する等の特段の事情がある場合にのみ権限濫用にあたると解するべきである。

 そして、利益を自己に帰属させる意思と表示の間に不一致がある場合に、93条ただし書を類推適用し、相手方がかかる意思について悪意または有過失であるときには、その行為の効果は本人に及ばないと解するべきである。

(2)これを本件についてみると、本件譲渡担保設定契約はBの債務を担保するために締結されたが、その目的は本人であるAの学費や進学準備費用にあてるためであるため、Bは利益を本人に帰属させる目的を有していたと言える。

 そうだとすると、かかる意思と表示の間に不一致は認められず、権限濫用に当たらない。

(3)したがって、上記反論は認められない。

4、上記反論が認められないとしても、Cは清算金の提供を未だしておらず、Aは受戻権を有しているから、Aが受戻権を行使し、被担保債権の弁済をするまでは甲の所有権はAのもとにあり、上記反論が認められない旨反論できないか。譲渡担保の法的性質とともに問題となる。

(1)この点、譲渡担保は、所有権を譲渡担保権者に移転するという形式ととっているが、その実質は債権担保にすぎないので、かかる実質を重視して、債権者は担保権を有するにすぎないと解するべきである。

 したがって、本件契約の締結時点では甲の所有権はCに移転していない。
(2)そうであるならば、どの時点で所有権が移転するか。被担保債権の弁済期日が到来した時点で担保目的物の所有権が移転するとも思えるため問題になる。

ア、この点、期日に弁済がなされないのみで譲渡担保権設定者の受戻権が消滅し、担保目的物の受戻しが不可能になるとするのは妥当でない。また、譲渡担保は債権を担保することで優先的な弁済を促すことを目的としており、担保目的物の取得を目的とするものではない。

 したがって、清算金の処分が完了した場合に初めて受戻権が消滅し、所有権が確定的に担保権者に移転すると解するべきである。

 具体的には、当該譲渡担保契約が帰属清算型の場合には、担保目的物の時価が被担保債権額を上回る時には清算金の支払時に、担保目的物の時価が被担保債権額と同額かそれ以下の時には通知時に、受戻権が消滅し、担保目的物の所有権が確定的に担保権者に移転する。

イ、これを本件についてみると、担保権者であるCは甲を第三者に処分するなどしていないことから、本件譲渡担保は帰属清算型であると考えられる。そして、担保目的物である甲の時価は400万円であり、被担保債権額の元本200万円と利子20万円を合わせた220万円を上回っている。

 したがって、その差額分である180万円の清算金の支払または提供をするまで、Aは受戻権を有する。

ウ、以上により、いまだ清算金の支払または提供を行っていないCのもとに甲の所有権は確定的に帰属していない。

(3)よって、上記Aの反論は認められる。

5、よって、Cの請求は認められない。

第2、小問2

1、Cは土地甲を占有しているAに対して、所有権に基づく返還請求権として甲の引渡請求をすることができるか。かかる請求が認められるためにはCに所有権が認められることを要する。

2、かかる請求に対して、AはそもそもBが行った本件譲渡担保設定契約は利益相反にあたり、無権代理としてかかる契約の効果が自らに帰属しないため、甲の所有権は自らのもとにあり、上記反論は認められない旨反論する。

 本件契約が利益相反にあたるか前述の基準で判断する。

(1)本件では、本件譲渡担保設定契約の相手方は第三者であるCであるため、利益相反行為にはあたらない。

(2)したがって、本件契約は無権代理とならず、上記反論は認められない。

3、そうだとしても、Bの行為は権限濫用にあたり、自らに効果帰属しないと反論することはできないか。前述の基準で判断する。

(1)本件譲渡担保設定契約はDの債務を担保するために締結されたが、その目的はDの競馬の資金に充てるためであり、利益を自己に帰属させる目的を有しているといえる。

 そうだとすると、かかる意思と利益を本人に帰属させようとする表示の間には不一致が認められる。

(2)そして、本件ではDはCに対して、200万円の使途を告げていることから、Dがかかる意思を有していたことにつき相手方であるCは悪意であるといえる。

 したがって、93条ただし書を類推適用し本件契約は無効である。

(3)以上により、本件契約の効果はAに帰属しないため、甲の所有権はAのもとにあるといえる。よって、上記反論は認められる。

4、よって、Cの請求は認められない。

 

第2問

1、DはBのCにして有している1000万円の普通預金債権を差し押さえてCに対して、1000万円の支払請求をする。

2、これに対して、Cは自らがBに対して有する保証委託契約に基づく求償権としての1600万円の支払請求を自動債権として、上記BがCに有する1000万円の債権と相殺(505条)することにより、Dの請求を拒めないか。

(1)そもそも、CはBに対して求償権として1600万円の債権を有しているか。

ア、この点、保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者に代わって弁済をした時には、主たる債務者に対して求償権を有する(459条1項)。

 本問で、Cは主たる債務者であるBから依頼を受け、BがAに対して負っている売買代金1600万円の債務を保証している。そして、Cは保証人としてAに対し1600万円を支払ったことから主たる債務者に代わって弁済をしたといえる。

したがって、保証人であるCは主たる債務者たるBに求償権を有するとも思える。

イ、もっとも、CはBに通知することなしにAに弁済し、その後BはAに1600万円の支払いをしていることから、CはBに弁済を対抗できず、求償権を有しないのではないか。

(ア)この点、保証人が債権者から履行の請求を受けたことを本人に通知しないで、弁済した場合に、本人は債権者に対抗できた事由を有していたときは、その事由をもってその免責を受けた保証人に対抗することができる(463条1項、443条1項)。

(イ)本問では、確かに、4月6日に、本人であるBは債権者に1600万円を支払い弁済している。しかし、この弁済は、4月5日に保証人であるCがAに弁済した後に、Aとの今後の取引関係を維持したいと金策に奔走し、確保した1600円によりなされている。そうだとすると、Cが弁済した4月5日の時点ではBはAに対抗できる事由を有しているとはいえない。

(ウ)したがって、CはBへの通知を怠っていても、弁済を対抗することができ、求償権を有する。

ウ、以上により、CはBへの求償権を有する。

(2)そうだとしても、CのBへの求償権はDのBがCに有する債権の差押えの送達後に生じていることから、かかる求償権をもって差押えられた債権と相殺することはできないのではないか。

ア、この点、支払いの差止めを受けた第三債務者はその後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができない(511条)。

イ、前述のとおり、CのBへの求償権はCが弁済した時に生じるところ、本問では4月5日午後2時に生じている。他方、Dの差押えの送達は同日の午前9時になされている。

 したがって、Cは差押えの送達後に生じた求償権をもって、差押えられた債権と相殺することはできないとも思える。

ウ、もっとも、CはBに対して1000万円の債務を負っていたことから、Bの保証人としてAと保証契約を締結したのであり、仮にBが債務不履行に陥り、自己が弁済することになったとしても、これにより得た求償権とかかる1000万円の債権と相殺することで、債務を減額しようと考えていたものである。

 この点、受動債権につき弁済を受けたのと同様の利益を受けられる点で、あたかも担保権を有するにも似た地位が与えられるという相殺の機能に鑑み、相殺者であるCの地位はできるだけ尊重すべきである。

 そこで、すでに保証契約を締結している場合には、差押えの送達後に生じた求償権であっても、差押えられた債権と相殺することができると解するべきである。

 以上により、CはBへの求償権を自動債権として、BのCに対する1000万円の債権を相殺することができる。

(3)よって、Cはかかる相殺をもってDの請求を拒める。

3、よって、上記Dの請求が認められない。

 

B君 61点

第1問
第1、設問(1)について
1、Cは甲土地を占有していると思われるAに対して、所有権(206条)に基づき、甲土地の引渡し請求をすることが考えられる。上記請求が認められるためには、Cが甲土地の所有権を有していることが必要である。
(1)Cは、Bが子であるAを代理して甲土地に譲渡担保設定契約を締結しているため、その効果がAに帰属していると主張することが考えられる。
 この点について、譲渡担保の実質は債権の担保であるため、担保的に構成することが当事者の合理的意思に合致する。そこで、所有権は設定者の下に残り、債権者は担保権を有するにすぎないと考える。
 もっとも、Bは弁済期が到来しているにもかかわらず、債務の履行をしていないため、Cは譲渡担保権を実行することにより、甲土地の所有権を取得することができるものと考える。
(2)これに対し、Aは、BC間の甲土地への譲渡担保設定契約は、利益相反行為(826条1項)に当たり、特別代理人が選任されていない本件では、無権代理(113条1項)となり自らに効果帰属しないと反論することが考えられる。
 では、BC間の甲土地への譲渡担保設定契約は利益相反行為に当たるか。
ア、取引安全の観点からして、利益相反行為に当たるか否かは取引の外形で判断すべきと考える。
イ、本件についてみると、譲渡担保設定契約は、売買契約とは異なり当然には所有権が移転せず、債務者が債務を弁済することによって所有権の移転を防ぐことができる。
ウ、そのため、BC間の甲土地への譲渡担保設定契約は利益相反行為に当たらず、その効果はAに帰属する。
(3)そうだとしても、Aは、BがAを代理して行った甲土地への譲渡担保設定契約は親権者の法定代理権の濫用に当たり、自らに効果帰属しないと主張することが考えられる。
ア、この点、代理権濫用の場合には経済的効果意思と表示との間に不一致が認められる点で、心裡留保に類似する構造がある。
 そこで、代理権の濫用がある場合には、93条ただし書を類推適用し相手方が代理権の濫用につき悪意又は重過失がある場合には、本人に効果帰属しないものと考える。
 もっとも、親権者には包括代理権が与えられ(824条)、広範な裁量が認められているため、法が親権者に広範な裁量を認めている趣旨を没却するような場合にのみ親権者の法定代理権の濫用に当たると考えるべきである。
イ、これを本件についてみると、BはAの学費や進学費用にあてるために甲土地を担保にしてCから200万円を借り入れている。
ウ、よってBC間の甲土地への譲渡担保設定契約は親権者の法定代理権の濫用には当たらず、その効果はAに帰属する。
(4)よって、Cが譲渡担保権を実行することにより、Cに甲土地の所有権が移転する。
(5)もっとも、CはAに対して清算金である180万円の支払いを受けていない。そこでAは清算金である180万円を被担保債権とする留置権を主張し(295条1項本文)、180万円を支払いがあるまで甲土地の引き渡しを拒むとの主張をすることが考えられる。
ア、Cが譲渡担保権を実行することにより、Cに甲土地の所有権が移転するため、Aは「他人の土地の占有者」に当たる。
イ、そして、清算金たる180万円の支払請求権は「その物に関して生じた債権」に当たる。
ウ、また、清算金支払請求権の弁済期は譲渡担保の実行時であると考えるため、弁済期も到来している(295条1項ただし書)。
エ、以上より、留置権が成立するため、AはCから清算金180万円の支払いをうけるまで甲土地の支払を拒むことができる。
第2、設問2について
1、Cは甲土地を占有していると思われるAに対して、所有権(206条)に基づき、甲土地の引渡し請求をすることが考えられる。上記請求が認められるためには、Cが甲土地の所有権を有していることが必要である。
(1)これに対し、前述同様、AはBC間の甲土地への譲渡担保設定契約は利益相反行為に当たり、無権代理となるため、自らに効果帰属しないと反論することが考えられる。
ア、利益相反行為該当性は前述と同様の基準で判断する。
イ、本件において、甲土地への譲渡担保の設定は、Dの債務の担保として行われている。DはBの兄ではあるものの、Aの親権者ではない。
ウ、よって、BC間の甲土地への譲渡担保設定契約は利益相反行為に当たらず、その効果はAに帰属する。
(2)これに対し、前述同様、Aは、BがAを代理して行った甲土地への譲渡担保設定契約は法定代理権の濫用に当たり、自らに効果帰属しないと主張することが考えられる。
ア、法定代理権の濫用に当たるか否かは、前述した判断基準のより判断する。
イ、これを本件についてみると、Bは兄であるDの競馬の資金の借り入れのために甲土地に譲渡担保を設定している。これは、法が親権者に広範な裁量を認めている趣旨を没却するものであり、法定代理権の濫用に当たる。
 そして、DはCに対して、200万円を競馬の資金にあてることを告げていたため、Cは法定代理権の濫用につき悪意であったといえる。
ウ、よって93条ただし書の類推適用により、甲土地への譲渡担保設定契約はAに帰属しない。
(3)よってCに甲土地の所有権は移転せず、Cの上記請求は認められない。

 

第2問
1、DはCに対して、乙債権を差押えたとして、乙債権の支払を請求している。
 これに対し、CはBに対して有する求償権と乙債権とを相殺(505条1項本文)することにより、乙債権は既に消滅していると反論することが考えられる。
 以下、Cの反論が認められるか検討する。
(1)まず、AがBに対して有する1600万の支払債務を担保するために、AC間で保証契約(446条1項)が書面により締結されている(同条2項)。
(2)そして、CはAに対して2017年4月5日午後2時に保証人として1600万円を支払っている。CはBからの委託を受けてAとの間で保証契約を締結しており、1600万円の支払という「自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為」をしたといえるため、CはBに対して1600万円の求償権を有するとも思える。
(3)2017年4月6日午前9時にBはAに対して1600万円を支払っている。以下、Bがその時点においてCによる1600万円の支払につき善意であったか否かにより、CがBに対する求償権を取得するか否かが異なるため、場合を分けて検討する。
ア、Bが善意である場合
Cは自らがAに対して1600万円を支払った後、Bに対してその旨の通知をしていない。そのため、Cの1600万円の支払につき善意であるBは、自ら1600万円の支払いを有効であったものとみなすことができる(463条1項、443条2項)。そのため、CによるAへの1600万円の支払はBとの関係では無効となり、CはBへの求償権を取得しない。
よってCはBへの求償権と乙債権とを相殺することはできず、Cの上記反論は認められない。
イ、Bが悪意又は過失がある場合
Cは自らがAに対して1600万円を支払った後、Bに対してその旨の通知をしていない。もっとも、BがCによる1600万円の支払につき悪意または過失があった場合には、依然としてCによる支払いは有効である。そのため、CはBに対する1600万円の求償権を取得する。
もっとも、Dは乙債権を既に差押えているため、乙債権と求償権とを相殺することはできないのではないか。
(ア)この点、511条は受働債権が差押さえられた後に取得した自働債権で相殺することができない旨を定めている。
(イ)本件では、Dが乙債権を差押えたことは2017年4月5日午前9時にCのもとに送達されており、CがAに1600万円を支払った時よりも先である。
(ウ)そのため、511条の適用があり、CはBに対する求償権と乙債権とを相殺することはできない。よってCはBへの求償権と乙債権とを相殺することはできず、Cの上記反論は認められない。
(4)以上より、Bの主観面にかかわらず、Cの反論は認められない。

 

C君 61点

第1問
第1 設問(1)
1CはAに対して、甲土地所有権に基づき甲土地明け渡しを請求する。
かかる請求が認められるためには①Cが甲土地所有権を有すること②Aが甲土地を占有することが必要である。
本件において、Aは甲土地を占有している。(②充足)
2では、Cが甲土地所有権を有するといえるか。CはBとの間でBがCに対して有する金銭債権を担保するため、甲土地につき譲渡担保設定契約を締結している。そして、かかる金銭債権は債務不履行に陥っているのだから、甲土地所有権はCに移転すると主張する。
3これに対し、Aはかかる譲渡担保設定契約は親権者(民法(以下法令名省略)818条1項)たる父Bが無断で締結したものであり、利益相反行為(826条1項)に該当するため、無権代理(117条1項)でありAの追認(116条)なき限りAに効果帰属せず、無効であると反論することが考えられる。
(1)利益相反行為に当たるか否かは、相手方の取引安全の見地から、行為の外形により客観的に判断する。
(2)本件についてみると、親権者たるBは自己が債務者となるCとの金銭消費貸借契約のための担保として、甲土地に譲渡担保を設定している。そうだとすれば、外見上Bは自己の債務のためにCの所有する甲土地に譲渡担保を設定したといえる。よってBの行為は利益相反行為に当たり、Aに効果帰属しない。
よって、Aは以前甲土地所有権を有し、Cは甲土地所有権を有するとは言えない。(①不充足)
以上より、CのAに対する請求は認められない。
第2 設問(2)
1CはAに対して、甲土地所有権に基づき甲土地明け渡しを請求する。
かかる請求が認められるためには、設問1と同様に、①Cが甲土地所有権を有すること②Aが甲土地を占有することが必要である。
本件において、Aは甲土地を占有している。(②充足)
2では、Cが甲土地所有権を有するといえるか。CはBとの間でBがCに対して有する金銭債権を担保するため、甲土地につき譲渡担保設定契約を締結している。そして、かかる金銭債権は債務不履行に陥っているのだから、甲土地所有権はCに移転すると主張する。
3これに対し、設問(1)と同様に、Aはかかる譲渡担保設定契約は親権者(818条1項)たる父Bが無断で締結したものであり、利益相反行為(826条1項)に該当するため、無権代理(117条1項)でありAの追認(116条)なき限りAに効果帰属せず、無効であると反論することが考えられる。
4(1)そして、利益相反行為に当たるか否かは、設問(1)と同様の基準から判断する。
(2)本件についてみると、親権者たるBが保障した債務は、DがCに対して負う金銭消費貸借契約に基づくに対して有する金銭債務であって、自己の債務の保障のため甲土地譲渡担保設定契約を締結したわけではない。よって、利益相反行為に該当しない。
5もっとも、Bは、競馬の借金で負けたDの債務を担保するために、A所有の甲土地に譲渡担保設定契約を締結しており、親権者として有する代理権の範囲を超え代理権濫用にあたり無権代理(117条1項)であり、Aの追認(116条)なき限りAに効果帰属せず、無効であると反論することが考えられる。
(1) そこで、代理権が濫用された場合の処理が問題となる。この点、法的効果の帰属先の点では内心と表示に不一致はないが、経済的効果の帰属先の点では内心と表示に不一致が存する。そこで、代理権が乱用された場合の処理は、93条但し書きを類推適用する。ただし、親権者が代理権を濫用した場合には、親権者に広範な代理権が与えられていることにかんがみ、代理行為が子の利益を無視して、自己または第三者の利益を図ることのみを目的としてなされるなど、親権者に子を代理する権限を授与した法の趣旨に著しく反すると認められる特段の事情がない限り、親権者の代理権濫用には当たらないと解する。
(2) 本件についてみると、親権者Bはもっぱら、Dが競馬で作った借金の担保のために甲土地に譲渡担保を設定しており、親権者に子の代理権を与えた法の趣旨に著しく反すると認められる特段の事情があるといえる。
   そして、譲渡担保設定契約の相手方たるCはDから200万円を競馬の資金にすることを聞いていたため、当該譲渡担保設定契約が代理権濫用の事例であることにつき、悪意であったといえる。よって、BC間の甲土地譲渡担保設定契約は無権代理となり、Aに効果帰属しない。
6 以上より、CはAに対して、甲土地明け渡し請求をすることが出来ない。

                                   以上

 

第2問
DはCに対して乙債権の履行を請求する。
これに対してCは、いざとなればBがCに対して有している預金債権たる乙債権と相殺(505条)すればよいと考えて、AがBに対して有する甲債権を保証している。(民法(以下、法名省略)446条1項)
本件において、乙債権の譲受人たるDは通知をしているにとどまるため、債務者はかかる通知を受けるまでに生じた「事由」を対抗できる。(468条2項)
では、では、上記の信頼はかかる「事由」に該当するか。
かかる信頼が生じたといえるためには、Cによる保証契約が、乙債権の発生よりも前になされる必要がある。
そこで、そのような場合には、Cの乙債権に対する信頼は保護されるべきであるとして、「事由」による反論をすることが可能となる。

※再現を放棄したようです